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 No.27 永明地区の近・現代(その18)

  むかしは、伊勢の大神宮にお参りすることが、一生のうちのつとめだとまでいわれていた。
  伊勢講をつくって交代で伊勢参宮をしたものである。バスや電車がないころには、何十日も
 かかって伊勢まで歩いて行ったのである。その苦労は大変だったであろうが、そのかわりに
 道中の見聞が楽しいものであったと思う。

  これはそのころの話である。明治32年(1899)に野中の兵助さんという人が伊勢参りをし
 たとき、伊勢の宿屋で初めて電灯を見た。「これはすすの出ないランプだ。ああいうランプを
 買って帰えるべえ」と下女(お手伝いさん)にいったところ、「お客さん、あれは電気というもの
 ですよ。」といわれたという。翌朝起きてみたら、こんどは馬のいない馬車があった。おかしい
 なあ、馬はどこかにいるんだんべえといって、車のまわりをまわってみたという。これは電車を
 初めて見たときの話である。今では信じられないような話であるが、この話、19世紀の末の
 話とすれば、別に不思議でもないのかもしれない。

  ところで、この辺でランプをつかっていたのはいつごろまでであろうか。ランプのホヤ磨きは
 子供の仕事であった。小さな手をホヤの中につっこんで、手や顔をよごしながら、ホヤ磨きを
 した思い出のある人は、何歳ぐらいまでの人であろうか。

  野中に電灯がひかれたのは大正11年12月のことだったという。この年の12月30日に
 「点火祝い」をしたと記録にある。


                                         (『農協えいめい』1973.12.01 40号)

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         No.28 永明地区の近・現代(その19)

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